奨学金を受け取っていた人はご存知かもしれませんが、奨学金は返還の免除が受けられる場合を除いて原則として一定の期間に返還することが義務付けられています。
そのため、奨学金を受け取っていた人が自己破産をする場合には、他の借金と同様に奨学金も「負債」として裁判所に申告しなければなりません。
また、奨学金を借りる際は保証人や連帯保証人が付けられている場合が多いため、その保証人に対するケアも必要となってきます。
そこで、ここでは奨学金を受け取っていた人が自己破産する場合の注意点や申立書の書き方について考えてみたいと思います。
奨学金も「負債」となる
前述したとおり、奨学金も他の借金と同様に「負債」となります。
奨学金も「返さなければならないお金」という言う意味で「借金」と同じですから、銀行や消費者金融からの借金と同様に、自己破産の申し立てにおいては「負債」として扱わなければなりません。
そのため、自己破産申立書の債権者一覧表には、日本学生支援機構など奨学金を貸与している機関を債権者として記載しなければならないことになります。
保証人に事前に連絡を入れておく
日本学生支援機構などで奨学金の契約をする際には通常、保証人や連帯保証人を付けることが義務付けられています。
一般的には親や兄弟、親族のうちの誰かが保証人や連帯保証人になっている場合が多いと思いますが、奨学金を受け取っている人が「もう就学金の返還はできなくなりました」といって自己破産する場合には、奨学金を貸与している側は、奨学金を受け取っていた人ではなく保証人や連帯保証人に対して「代わりに支払え」と請求してくることになります。
このように、奨学金を受け取っていた人が自己破産する場合には、その保証人や連帯保証人に請求がなされることになりますので、自己破産することが決まったら即座に保証人や連帯保証人に連絡をし、経済的な負担を少しでも和らげることができるようにしてあげなければなりません。
奨学金を返さなければならない相手方を債権者として債権者一覧表に記載する
奨学金を受け取っていた人が自己破産する場合には、奨学金を介さなければならない相手方を債権者として債権者一覧表に記載しなければなりません。
債権者名・住所
債権者一覧表の債権者名や住所は、奨学金の契約書に記載されているものや奨学金の請求書に記載されているものを記載しておけば大丈夫でしょう。
借入・購入等の日
債権者一覧表の「借入・購入等の日」の欄には。奨学金を受け取っていた時期を記載しておけばよいでしょう。
例えば、奨学金を受け取っていたのが平成23年4月1日から平成26年3月31日までの期間であった場合は、「H23/4/1~H26/3/31」などと記載しておけばよいでしょう。
債務額
債権者一覧表の「債務額」の欄には、自己破産の申立時点で残っている奨学金の総額を記載します。
延滞金などが付いている場合は、その延滞金なども含めた総額を記載しておきます。
使途
債権者一覧表の「使途」の欄には、「その他」に☑を入れ、「(奨学金)」と記載しておけばよいでしょう。
保証人等一覧表にも記載する
債権者一覧表とは別に保証人等一覧表がある場合には、保証人等一覧表に保証人や連帯保証人になってくれている家族や親族の人の氏名や住所を記載します。
奨学金を自己破産の手続から除外することは可能か?
奨学金を受けている人が自己破産する場合に、保証人になってくれている家族に迷惑はかけたくないとの理由で奨学金を借りていることを隠す人がたまにいます。
しかし、奨学金だけを自己破産の手続から除いたり、奨学金があることを隠したり、奨学金からの借入だけを事前に返済してしまうといったようなことは、全て不正な行為として免責不許可事由に該当し、借金の免除が受けられなくなってしまう恐れがあります。
また、このような不正行為は詐欺破産罪や説明義務違反として刑事罰の対象となり、犯罪となりますので絶対にしてはいけません。
自己破産することで保証人に迷惑を掛けたくないという気持ちはわからないでもありませんが、事情をよく説明して理解してもらうしかないでしょう。
奨学金の利用者が自己破産する場合には、保証人にや連帯保証人に迷惑をかけるのは避けられない事実です。
そのため、その現実を受け入れたうえで自己破産の申立を行い、手続きが終わった後で何らかの形でその保証人に恩返しをすることを考えるしかないのではないかと思います。