自営業者の自己破産で在庫の商品がある場合の対処法

その売却する価格は適正な価格であることが必要となりますし、売却する相手方についても中立公正な立場の相手方でなければ後で問題となってしまいます。

たとえば、すぐにお金がほしいばかりに不当に割引した値段で売却した場合には、自己破産の申立後に裁判所から「なぜそのような不当な値段で売却したのか」「通常の値段で売却しておけばもっと高い売却代金を受け取ることができ債権者に部敗することができたのではないか」といった点を厳しく指摘される恐れがあります。

また、売却する相手が親族などであった場合には、「自分の親族に不当に安い値段で売却したのではないか」ないかといった点を厳しく裁判所に調査されることになる可能性があるので、自分の身内や関係者に売却する場合には十分に注意する必要があるでしょう。

このように、腐りやすい生ものや食品関係など、早く処分しなければ資産的な価値が損なわれてしまう可能性のあるものについては、自己破産の申立前であっても売却してお金に換えておくことも必要となる場合があります。

しかし、たとえこれらの腐りやすいものであっても、原則的には自己破産の申立後に裁判所が取り上げて、裁判所が主導して(正確には破産管財人が主導して)売却し債権者に分配(配当)するという取り扱いになっていますので、可能な限り自己破産の申し立ての前に処分することは慎み、どうしても自己破産の申し立てまでに間に合わない場合にのみ処分するように心がけるのが重要です。

そして、その場合でも、自分で勝手に判断するのではなく、自己破産を依頼する弁護士や司法書士に相談して処分するかどうか決めるようにし、処分する場合でも自己破産の申し立てを予定している裁判所の書記官などに対応を相談しておくことも必要になってくると思われます。

 

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在庫の商品を処分する場合には適正な価格で処分したことを証明する資料を残しておく

前述したように、生ものなど腐りやすい物など、早く処分しなければ資産的な価値が損なわれてしまう商品については、自己破産の前に処分することが必要となる場合も存在します。

ただし、たとえ処分が必要となった場合でも、売却した価格が正当な価格であること(不当な安い値段で売却したものでないこと)を証明する資料を保管しておくことを忘れないようにしなければなりません。

なぜなら、自己破産の直前に自分の資産を処分することは、原則的には「債権者の資産を棄損すること」と判断されるので、自己破産の手続きにおいて裁判所が厳しくチェックすることになるからです。

正当な価格で売却したことを示す証拠があれば、たとえ裁判所の調査の際に疑われた場合であっても、「いや、在庫の商品を処分はしましたが、これこれこういうふうにきちんとした正当な値段で売却していますから、債権者の財産を不当に損なったわけではありませんよ」と説明することができるので安心です。

この説明ができないと、財産を不当に棄損したとして、免責不許可事由(借金の返済が免除されないこと)に該当して思わぬ不利益を被ってしまう恐れもありますので注意が必要です。

具体的には、たとえば、漁師さんが自己破産する場合に水揚げした魚を売却する必要がある場合は、その売却金額が適正な価格であることを示すような資料(具体的には卸売市場の買取価格の基準や過去の売却実績の資料など)を保管するようにしたり、ぶどう農家の人が自己破産する場合に収穫したぶどうを売却する場合には、農協の買取価格表や過去の卸値の実績などがわかる資料などを保管しておくなどが考えられるでしょう。

 

以上のように、自営業者が自己破産する場合に在庫の商品を抱えている場合には、その処分については細心の注意が必要となります。

自己破産の申し立てを行う場合には、依頼する弁護士や司法書士と十分に打ち合わせを行い、在庫の商品の取り扱いには十分に配慮することが必要となるでしょう。

≫ 弁護士と司法書士、自己破産を依頼するならどちらがいいの?

 

なお、自営業者が自己破産する場合に、仕掛かり中の仕事がある場合の対処法についてはこちらのページを参考にしてください。

≫ 自営業者の自己破産で仕掛かり中の仕事がある場合の対処法

 

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