自営業者の自己破産で在庫の商品がある場合の対処法

自営業者が自己破産する場合には、在庫の商品の取り扱いに注意しなければなりません。

なぜなら、在庫の商品をむやみに処分してしまうと、自己破産の申立後に「財産の隠匿」や「財産の不当処分(不利益処分)」として裁判所から厳しく指摘されてしまう恐れがあるからです。

自己破産の手続きは借金の返済を免除してもらう手続きですが、無条件に借金の免除がなされるわけではありません。

自己破産の申し立てを行うと、その所有する財産は裁判所に取り上げられて売却され、お金に換えられて債権者に分配(配当)されるのが原則で、それでも返済できないような借金だけが免除されるということになっています。

そして、このことは自営業者の「在庫の商品」についても同様で、「在庫の商品」も自己破産する人の「資産(財産)」として裁判所に取り上げられ、売却されて得られたお金が債権者に分配(配当)されるのが原則的な取り扱いです。

そのため、もしもこの「在庫の商品」を自己破産の直前に処分してしまった場合には、債権者に分配されるべき「財産(資産)」を裁判所の許可なく勝手に処分したものということになってしまい、「債権者の利益を害する行為」として免責不許可事由(借金の返済が免除されなくなること)として厳しく処分されてしまう可能性が生じてしまいます。

そこで今回は、自営業者が自己破産の申し立てをする場合、在庫の商品などはどのように扱えばよいのか、という点について考えてみることにいたしましょう。

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「在庫の商品」には一切手を付けないのが原則

まず、原則的なことをいうと、自己破産をすることが決まった後は(「自己破産しようと思い始めた後」ということ)、「在庫の商品」には一切手を付けないのが正しい対処法となります。

前述したとおり、自営業者が自己破産をする場合の在庫の商品は、自己破産の申立後に「債権者に分配(配当)されるべき財産」ということになりますから、たとえ自己破産の申し立て前であっても、自分の財産ではなく「債権者の財産」ということが言えます。

自己破産をしようと思った時点以降は、「在庫の商品」は自分の財産(資産)であると同時に「債権者の資産」ということにもなりますから、その債権者の資産でもある在庫の商品を勝手に処分してしまうことは「債権者の財産を目減りさせた(棄損した)」ということにつながり、自己破産の申立後に裁判所(裁判官)から厳しく指摘される場合があるのです。

そのため、もし自己破産をしなければ借金の解決ができないという状況であるならば、在庫の商品には一切手を付けない方が安全だと思われます。

例えば「お米屋さん」を営む自営業者が自己破産を決意した場合には、即座にお米屋さんのお店を閉店し、それ以後は一切コメの販売をしないようにした方がよいでしょう。

自己破産を決意した後は、お店においてある在庫のお米や売れ残ったお米は、すべて裁判所に取り上げられて売却されて債権者に分配されるべき「資産」となりますから、自己破産前に勝手に処分することは避けるようにした方が安全です。

 

生活費に必要な分については必要最小限度の範囲内で処分することも認められる

前述したように、自営業者が自己破産する場合には、在庫の商品については一切手を付けないというのが基本的な取り扱いとなります。

しかし、一切の在庫の商品を処分できないとなると、在庫の商品を売ることで日々の生活費を得ている自営業者の場合には、死活問題となってしまうこともあるでしょう。

そのため、そのような在庫の商品を売却しないと生活が全く成り立たないというような場合には、必要最小限度において在庫の商品を処分することは、裁判所も厳しく指摘しないことが多いです。

たとえば、陶芸家の自営業者が自己破産を予定しているものの、制作した陶芸品を売却しなければ食費や光熱費、自宅の家賃を支払うことができないをいう状況である場合には、生活費を支払うのに必要な限度で所有する陶芸品を売却することも可能と考えて問題ないでしょう。

ただし、これは「生活費」として「必要最小限度」の範囲内の例外的な話になりますので、実際に売却しなければ生活できないような場合には、自己破産を依頼する弁護士や司法書士に相談して決めることが必要になってくると思います。

 

野菜や魚など、腐りやすい商品は処分することも認められる

前述したように、自己破産の申し立てを行う場合には在庫の商品はそのままにして裁判所に引き渡すのが原則ですが、野菜や果物、魚介類など、保管しておくと傷んでしまう商品については特別な注意が必要です。

これら野菜や果物、魚介類といった生ものは、そのまま保管しておくと腐ってしまい、商品価値が損なわれてしまうのが通常です。

そのため、これらの腐りやすいものについてまで、原則どおり自己破産の処分前に売却することができないとしてしまうと、かえって商品の価値を損ねてしまい、売却しないことが逆に「債権者の財産を目減りさせる(棄損する)」ことのなってしまう恐れもあります。

これら腐りやすい物については、早めに売却してお金に換えておき、そのお金を「紙幣」や「硬貨」といった形で保管する方が債権者の利益に資するということも言えるのです。

そのため、これらの腐りやすいものについては、自己破産をすることが決まった後であっても、売却してお金に換えておくことも一定の範囲で認められると考えられます。

しかし、これら腐りやすい食料品であっても、無条件に売却が認められるかというとそうではありません。

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