自己破産で勤務先からの借金や給料の前借がある場合

自己破産の申立をする場合には、全ての債権者を平等に扱わないといけないという大前提の決まりがあります。

一部の債権者だけ特別扱いをして返済をしたりすることは免責不許可事由に該当し、最終的に借金の免除が受けられないという事態にもなりかねないので注意が必要です。

この点、勤務先の会社からお金を借りていたり、給料の前借をしている場合は要注意です。

勤務先からの借金や給料の前借をしている場合は、会社に対して返済しなければならないお金があるという意味で、勤務先の会社が債権者の一つとなります。

そのため、自己破産の申し立てにおいても、勤務先の会社を他の債権者と同様に債権者として扱わなければなりません。

そこで、ここでは自己破産をする際に勤務先からの借入や給料の前借がある場合の注意点などについて考えてみることにいたしましょう。

勤務先であっても自己破産の手続きでは債権者となる

前述したとおり、勤務先からお金を借りていたり給料の前借をしている場合には、勤務先の会社が債権者となりますので、債権者一覧表に債権者として勤務先の会社を記載しなければなりません。

債権者一覧表の作成手順(2)債権者名の記載方法

 

勤務先に事情を話して理解してもらうことが必要

勤務先の会社からお金を借りていたり給料の前借をしている場合は、勤務先も債権者として扱わなければならないため、自己破産の申立を行うと裁判所から勤務先に通知書が送付されることになります。

そうなると当然、勤務先に自己破産していることが明らかとなってしまいますので、勤務先との良好な関係を気付いて行くにためには申立前に会社の人に事情を説明して理解をもらうことが必要でしょう。

 

勤務先からの借金だけ先に返済することは可能か?

勤務先からの借金や給料の前借だけを、自己破産の前に返済してしまうことは認められるでしょうか?

勤務先からの借金をなくしてしまえば、自己破産の手続きにおいて勤務先を債権者として扱う必要性が無くなるので、自己破産することが勤務先にバレるようなこともありません。

しかし、このように勤務先だけを特別扱いして返済することは、債権者平等の原則に反することになりますので、破産の手続では禁じられています(破産法252条)。

ですから、たとえ勤務先にバレてしまうのと防ぐためであったとしても、勤務先だけを特別扱いして返済することは基本的に認められませんので注意が必要です。

 

勤務先からの借入が極端に少額の場合はどうか?

勤務先の会社を特別扱いすることは認められないですが、とはいっても勤務先からの借金が極端に少ない場合にも返済してはいけないのでしょうか?

例えば自己破産する人の借金総額が500万円である場合に、勤務先からの借入が3000円しかないような場合にも原則どおり債権者を平等に扱わなければならないとしてしまうと、あまりにも酷な気がします。

このような場合、勤務先の借金だけを申し立ての前に返済してしまうのは認められないのでしょうか?

この点の判断は微妙ですので、このような場合には相談する弁護士や司法書士に尋ねた方が良いでしょう。

個人的には勤務先からの借金が数千円という少額の場合にまで他の債権者と平等に扱う必要があるのかと思いますし、勤務先に自己破産することがバレることで受ける不利益を考えれば、数千円の借金を勤務先に支払うのも認められるのではないかとも思います。

ただし、原則的にはたとえ数千円であっても一部の債権者を特別扱いすることは認められませんので、個別の案件で判断していくしかないでしょう(なので、こういう場合は弁護士や司法書士に個別に相談することをお勧めします)。

もっとも、仮にこのような場合に勤務先に返済したような場合には、裁判所に隠すことはよくありませんので、陳述書の「一部の債権者への返済」の欄に、その返済した金額などを記載しておくことが必要です。

陳述書の作成手順(12)一部の債権者への返済の欄の記載方法

 

上申書を作成して提出する

また、仮に自己破産することが勤務先にバレるのを防ぐため、勤務先からの借金を申立前に返済してしまったような場合には、上申書を作成して、なぜ勤務先に返済する必要があったかということを裁判所に説明して理解してもらう必要があるでしょう。

〇地方裁判所 御中

平成〇年〇月〇日

上申書

申立人 破産太郎 ㊞

勤務先からの借金を申立前に返済したことについて

陳述書の偏頗弁済の欄にも記載しているとおり、申立人である私は、申立前の〇年〇月〇日に、勤務先の会社に対し、金〇万円を返済することにより、勤務先からの借金を完済した事実がございます。

これは、法的には偏頗弁済となる行為であり、許されるものではございませんが、私の勤務している会社は社長が一代で築き上げたワンマン経営の企業でございまして、従業員の私生活にまで厳しく干渉するような社風がございます。

そのため、もし勤務先の会社に自己破産することが知れることになれば、減給や最悪の場合解雇や自主退社を求められるなど大きな不利益を受けることが予想されました。

そのような事情があり、自己破産後の経済的更生を図る上でも、現状で仕事を失うことはどうしても避けたいという気持ちが強かったため、やむなく会社からの借金を自己破産の申立前に解消してしまったものでございます。

以上のように、この偏頗弁済については、やむを得ない事情もございましたので、裁判所と債権者各位に寛大な判断をしていただきたく上申した次第でございます。

以上

 

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